ここでようやくオートバイの歴史に入ります。最初のオートバイの出現は、先に説明した自転車が現在の形になるちょっと前のこととなります。

 世界初のオートバイと見なされているものは、意外にもイギリスではなく、最初の自転車と同じドイツ製。ダイムラー・ベンツ社の創始者の一人として有名なG・W・ダイムラーがガソリン機関のコンパクト化に成功したことから、コトは始まります。

mc01.jpg

 1886(明治19)年、ダイムラーは、自身のガソリンエンジンを二輪車に取り付け、実走に成功しました。(なお、蒸気機関を動力とした自転車はこれ以前にも存在していました。)

 エンジンは、4サイクル単気筒、排気量260cc、0.5馬力で、おそらく平均速度だと思うのですが、時速7マイル(11.2km/h)を出したそうです。

 エンジン以外の構造は当時の自転車の一タイプに分類されるものであり、市販の自転車を流用したのか、構造だけ真似てオートバイ用に新造したのかは、当方は不明です。

 フレーム素材は木製。この当時、すでにスチールフレームの自転車が存在していました。単に工作上の容易さから木製を選んだのでしょうか?

 補助輪が左右に付けられ、厳密には4輪となっています。

 ダイムラーにとって、オートバイ製作は習作に過ぎなかったようで、オートバイで成功した翌年すぐに、馬車とボートにエンジンを付ける対象は移っています。(彼がオートバイに執着していたならばメルセデス・ベンツというクルマは、現在、存在しなかったかもしれません。あるいは、ドイツにはBMWとはまた違ったオートバイメーカーが現存していたかも・・・)

mc02.jpg

 初めて量産されたオートバイは、ダイムラーの成功からわずか8年後の、1894(明治27)年に登場します。

 同じくドイツの、ヒルデブラント&ヴォルフミューラー(Hildebrand & Wolfmuller)号で、1488ccの水冷2気筒エンジンを持っていました。さすがに量産品、というべきか、ダイムラーよりも全てが洗練されており、スチールパイプのフレームに、おしゃれなデザインのフェンダーすら装備し、細部においても高い完成度を見せています。

mc03.jpg

 フレーム形状は、完全に自転車の世界から外れているのが意外な印象です。

 約300台の生産で、日本にも輸入されたとのことです。(現存しているのでしょうか?)

triumph1902.jpg

1902 First Triumph

 前回説明したように、自転車大国だったイギリスは、そのままオートバイ大国にもなります。多くのメーカーは1900年あたりからオートバイ製造を成功させました。(現在までに700近いブランドが生まれては消えていきました)

 参考までに、1970年代まで生き残った英国御三家、ノートン、トライアンフ、BSAの創業年次を書き連ねてみます。

 ノートン:1898(明治31)年設立、1902(明治35)年に最初のオートバイを製造。

 トライアンフ:1902(明治35)年、2人のドイツ人!!によって創業。

 BSA:1861(文久元)年設立の銃器メーカー。1880年代に自転車、1910(明治43)年にオートバイ製造を開始。

 なお、マン島TTレースは、1907(明治40)年に始まります。初年度は、単気筒クラスと総合クラスでマチレスが、2気筒クラスは、フランス・プジョー製エンジンを載せたノートンが優勝しました。

 他、大陸と日本では・・・

mc04.jpg

1903 First Harley-Davidson

 アメリカ最古のオートバイメーカーは1901(明治34)年創立のマサチューセッツ州スプリングフィールドのインディアン社とされていますが、それ以前にも個人、あるいはそれにに毛の生えたレベルでのオートバイの製造は行われており、意外にも?オートバイ先進国でありました。

 アメリカに現存する唯一のメーカーであるハーレー・ダビッドソンは、1903(明治36)年、ウイスコンシン州ミルウオーキーにおいて、自身、初のオートバイを製造しました。(同じ年、ライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功。)

mc05.jpg

 オートバイの国産1号は、1909(明治42)年、若干22歳の島津楢蔵による、エンジン(4ストローク、400cc)、フレームとも自作のNS(Narazo Shimazu)号です。(前年すでに自作の2スト400ccエンジンをアメリカ製自転車のフレームに載せた習作を完成させています。)

 オートバイの出現から23年後。意外に早かったのですね!(もちろん、個人によるワンオフで、量産メーカーの出現はまだまだ後のことです。)

(つづく)