仕事でよく行く横浜の陸自では、土地柄、フェラーリ、ランボルギーニあたりはちっとも珍しくありません。また大きな声では言えませんが、割と検査がぬるめなので、1クセも2クセもあるクルマが車検を受けに来ています。

 ちょっとやそっとのクルマでは驚かない私でも、度肝を抜かされた一台です。

 ナンバーで英国ですでに登録されていたことが分かります。

EAD468A

登録した場所を表すアルファベット3つ、3桁の数字、末尾は年式を表すアルファベットという形式のナンバープレートは英国では1963年から1983年まで使われました。

EAD=エセックス
A=1963年

 ミリタリーマニアではないので、さすがに車種は知りませんでしたが、家に帰ってから調べたら、わりとポピュラーな車種のようで、簡単に判明しました。”ディムラー・フェレット・スカウトカー”とのこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88_(%E8%A3%85%E7%94%B2%E8%BB%8A)

 ディムラーというのは、言わずと知れた英国の高級車メーカーですが、1960年にジャガーに吸収され、今ではブランドだけ残って、ジャガーのバッジ・エンジニアリング車に身をやつしています。

Daimler Ferret scout car

Place of origin: United Kingdom

Produced: between 1952 and 1971

Weight: 3.7 t

Length: 3.7 m

Width: 1.91 m

Height: 1.88 m

Crew: 2 (commander, driver)

Engine: Rolls Royce B60

6 cylinder in line 4.2 litre

130 hp (97 kW)

ferret_duxford

 車両以外に、そのエンジンも興味深いものです。

 フェレットのエンジンは、自社製ではなく、ロールスロイス製を使っており、B60と言います。(基本設計を同じくする兄弟エンジンに、直4版B40、V8版B80があります)

 B60のヘッドは、当ブログ(http://www.italian.sakura.ne.jp/sons_of_biscuits/?p=1837)でも紹介した、今となってはちょっと珍しい IOE (Inlet Over Exhaust) のヘッドを持っています。

 B60は大戦後に開発されたエンジンですが、当初、軍用のみに使用されました。その鋳鉄ヘッドをアルミヘッドに置き換えるなどの改修を受けたものが、超高級車であるロールスロイスとベントレーの市販車に採用されたというのは、驚きです。(設計当初から共用を意図していたのでしょうか?)

 左が軍用B60、右が民生用B60。

 B60を積んだロールス&ベントレーは以下4種です。(B60は、1951年、4.2Lから4.6Lに拡大されます)

1946-1959 Rolls-Royce Silver Wraith

 シルバーレイスのベントレー版がこのマーク6。

1946-1952 Bentley Mark VI

 同じくシルバーレイスのシャーシを使いながらも、ボディのコーチワークをロールス・ロイス自身が初めて行ったモデルがシルバー・ダウン。760台と、ごく少数の生産にとどまっています。

1949-1955 Rolls-Royce Silver Dawn

 4.2Lから4.5Lに拡大されたストレート6は、マーク6の後継Rタイプにも使用されます。

1952-1955 Bentley R Type