以下の画像は前回紹介した4つのフライホイールを個別に写したものです
これがSSやMに標準に装着されているもの。構造的には、クランクに取り付けるスプラインが切ってあるインナーパーツとフライホイール本体というべきアウターパーツが、7本のボルトと1本の位置決めノックピンとで結合されています。
フライホイール本体部分だけで2kg以上の重さがあります。
画像上は鉄製のフライホイール本体部分を社外のアルミ製で置き換えたものです。フライホイール本体部分がだいたい600g程度。アルミの比重は鉄の約3分の1ですから、大体、比重の通りの軽量化の度合いとなります。(70%も軽くなってしまうんですね~!)
昔、ドカ本国の関係者から、アルミ製フライホイールは使ってくれるな、というアナウンスがあったと聞いたことがあります。(事実かどうか、未確認ですが・・・)これは、アルミと鉄との熱膨張率の違いから、何らかの問題が起きることを危惧してのことだと思われますが・・・とすると、センサーとフライホイールのクリアランスは0.6~0.8mmに設定するようになっているのですが、問題が起きるとすればこのあたりくらいしか心当たりはないのですが・・・
とはいえ、日本のみならず世界でも、軽量フライホイールといえば、アルミ製が主流なんですよね。FBF(ファスト・バイ・フェラッチ)のような一時期、アメリカ大陸における事実上のドカティ・ワークスの任を託されていたような大御所も、堂々とアルミ製のフライホイールを自社製チューニングパーツとして売っています。そしてまた、それで運用上の問題が発生したと聞いたことはありません。
個人のホームページなんかで、アルミ製は点火タイミングにずれが生じるからよくない、と書かれていたのを見ましたが、これはなにゆえなんでしょうか?意図的に変更してある?あるいは製造メーカーによっては工作精度が悪い、ということなんでしょうか?
これも軽量フライホイールですが、ノーマルをベースに切削加工を施したもので、アウターはおろかインナーまでをも、徹底的に削ってあります。(次回でその詳細をご紹介いたしましょう)
実はこれは私の作ではなく、とある日本国内のドカチューニング・ショップによるものなんですが、そこは上記の経緯で、アルミへの置き換えを嫌い、執拗といっていいほどに加工の手間をかけているとのことです。オーナーはその効果を常に体感できるとはいえ、取り付ければ見えなくなってしまうのが少々残念に思えるほどの仕上がりですね。
ただ、ここまでして仮に静的な重量をアルミと同じにしても、回転マスですから(中心部からの距離に比例する遠心力による作用で)、動的にはアルミ製ほどの軽量効果は望めません。(さらに言えば、削りの場合、70%の減量は,削り代という点でかなり難しく、50%くらいが順当となるのではないでしょうか)ええ、もちろん、フライホイールは軽ければ軽いほどいいわけではありませんから、それで優劣を述べるつもりは当方にはございません。
上の削りに削ったホイールと併せて紹介しなくてはならないのは、いわゆる”プレス製”フライホイールです。400ccに使われている純正品で、他とは違って鋼板のプレスで加工で作られたものゆえに、そう呼ばれています。これが750、900クラスの軽量フライホイールとして使用されることもあります。
ただ、私は点火タイミングの取り方が900なんかと微妙に異なることを確認しておりまして、まあ、使ってみて明らかな問題は無いのですが、厳密にはどういう形の影響があるのかを明確に調査したことはありません。
なお、純正品といっても、新品の入手は、値段やメーカー在庫の点で必ずしも容易ではありませんので、たまたま中古が手元にあったというケースでしか積極的な採用理由はないかな~というのが私の印象です。
画像をよく見ると、インナーパーツのスプライン形状が上の3つとは異なり、荒いことに気づかれるかと思います。これはパンタ系から基本設計が引き継がれたスモールケース系(400、600、750)が有するパンタ系からの遺産なのですが、初期のラージケース(900)のクランクでも同じスプライン形状を有しておりましたが、のちに変更をされました。
ラージケースが出てまもなく、クランク軸部とフライホイールの締結が緩む危険性があるという問題が出された経緯があり、この変更は、その対策の一環ではないかと、私は推測しております。(フライホイールとオルタネータを重ねてクランク軸に締結するナットなんかも初期から変更を受けていますね。)
(つづく)