今回は目先を変えて、地味だけど光るバイク・・・というか、私自身ナメていたけど、真価を思い知らされた、というバイクを紹介したいと思います。
まずはTW200。
87年デビュー。世に出てはみたものの、10年間、バリバリの不人気車でした。その間、よく製造中止にならなかったのが不思議。しかし、世の中、何が起こるか分かりません。90年代後半、一ショップが興し全国的に広がったムーブメント、「スカチューン」とかいう、いわゆる「ストリート系」カスタムのベースマシンとして注目されると、一気に大人気車に成り上がり。
メーカーもそれに媚びる形で、生粋のオフ車をロードモデルとしてマイナーチェンジさせます。と、なんだかんだで20年販売されている、にわかに信じがたい存在。
ちょうど、私がKDXに乗っていた頃、高校時代の友人が所有しており、彼はバイクに特別な興味は無く、ただ便利なアシとして乗っていて、車種の選択も、不人気車ゆえ中古車が安かった、という理由に過ぎませんでした。
それでもヒマな学生同士、同じオフ車ということで、彼を秩父の方の「ヤブ漕ぎ」に誘ったのです。ヤブ漕ぎというのは、林道のさらに奥、道なき道、ヤブの中をバイクで進んで(漕いで)いくという自虐的なイベントのことです。(今では、かような行為は環境破壊ということで厳しく非難されるでしょうが、当時はまだ社会問題になっておりませんでした。)
私は脂の乗り切っていた頃で、こちとらレース用にバリバリにチューンしたKDX。圧倒的な差というものをTWに見せてやろうか、くらいに思っておりました。ええ、TWをとことん侮っていたのです。
もう展開は見えてきましたね・・・私は喜び勇んでいったヤブ漕ぎでハマってしまったのです。初めて走る秩父の地面は想像以上に柔らかで、KDXの、2ストの唐突かつ強大なパワーでは、地面を掘り返すばかり。あげくの果てのスタック。あちこち穴だらけにしながら、さっきから、ぜんぜん前に進んでいない。泣きたくなる。
一方、TWは・・・16psというあり過ぎないパワーと、4ストの穏やかな出力特性、さらにはそのバルーンタイヤで、おなじ地面をトコトコっと、難なくクリアしてしまう。彼は、私が散々苦労していることが理解できない模様。
完敗でした・・・そういえばこのバイク、風間深志氏が、北極点にバイクで到達するという冒険の際、ベースマシン(エンジンは冷間時の始動性を高めるために2ストに換装されている)だったんですよね。
もう一台は、VTZ250(87年)。
先代のVTはRZキラーとして、ホンダの250ccクラス最強のスポーツバイクでしたが、その辺はNSやらCBRやらに譲り、モデルチェンジし、VTZとなると、ビジネスバイク並みの地味さ(実際、バイク便によく使われていた)すら湛えるようになっておりました。
これも上とは別人の高校時代の友人が乗っていて、まさに通学の脚とすべく選んだバイクでした。
で、彼とツーリングに行ったのです。当時私は、KDXを買う前だったかな。自分のバイクを持っていないときで、借り物のGB250かなんかに乗っておりました。(GB250もエンジンは良いバイクでした。車体はそれなりだったかな。)
で、どこだったか、山梨あたりの山道でVTZに乗らせてもらったのです。
驚きました、そのハンドリングの良さに。以前のCBRではバイクの乗ることに自信を持てないでおりましたが、VTZでは、ブレーキング、コーナリング、そして立ち上がり加速、すべて思いのまま、といっていいほど。それも、初めて乗るバイクですよ!
VT系のハンドリングのよさは定評のあるところですが、エンジンも250のツインですから、パワーがそこそこなのも扱いやすさとなったのでしょう。(とはいえ、最大出力43ps/12,500rpm、最大トルク2.5kgm/10,500rpmと立派。)なにより、乾燥重量で144kgという軽量さも大きいでしょう。
ただ、私も若かったですから、そこでVTZという選択はありませんでしたね。
どちらも、もう20年ほど前のことですが、彼らは当時自分が乗っていたバイクのことを、果たして覚えているのでしょうか?