今はほとんど下火になってしまいましたが、80年代半ばから90年代半ばまで、日本を含め世界的にシングルレースが盛んだった時期がありました。
ご存知ドカのスーパーモノ(1993)は、そういう時代を請け生まれたものでしたが、ここで紹介するイクザワ・ハリスは、その初期から中期にかけ、バブル経済という当時の社会的背景の下、マン島TTとルマン24時間という超有名なレースに参戦しました。
当時、バイクショップを趣味的に経営していた伝説的なレーサー、生沢徹氏が自身の名前を関したモーターサイクルを造るにあたり、当人の英国びいきとホンダとの人的つながりから、英国ハリスのフレームにホンダのシングルエンジンという結びつきを実現させたのでした。
最初のイクザワ・ハリスはTH1Rのサブネームを持ち、1986年に登場。公道バージョンも存在し、エンジンはホンダXBR500(GB500の輸出仕様)の
498cc (BxS:89mmx80mm)
でした。レース仕様は、XBR500のチューニング版、HRCのダートトラックレーサーDR600の
628cc (BxS:100mmx80mm)
およびXL/XR600用
591cc (BxS:97mmx80mm)
などが存在しました。(ボアのみ相違。ストロークは同一)
これが87年、マン島TTのTTF2クラスに出走したTH1R。
オーバー・ザ・トン(平均100mph=160km/hオーバー)を達成するも、決勝はリタイア。エンジンはXL/XR600系。これは600ccまでというF2クラス最大の排気量を得るための選択でしょう。乾燥重量は112kg。250ccのトレール並み。軽い!!
その2年後の89年4月のルマン24時間に出走したTH3LM。
LMはいわずと知れたLeMansの意味。TH1Rのマルゾッキ35mmフォークとハリス製クロモリスイングアームは、NSR250SPの足回りに交換されています。またエンジンは上記3種のどれでもない、NX650ドミネーター用
644cc (BxS:100mmx82mm)
をベースにHRCチューンを施したもの。乾燥重量136kg。(アラ、TH1Rから24kgも増えちゃってますね!)
アラン・カスカートによるレポートでは、カウルの形状=空力的効果について疑問を呈されていますが、見た目は相当スタイリッシュ。私好みです。
予選においては、そのハンドリングで区間によっては驚きの速さを見せたものの、アップダウンのきついルマンでは非力なシングルの不利はカバーしきれず、残念ながら予選落ちでした。
若いころは、でかいバイクでブイブイ言わせないとバイクに乗った気がしなかったものですが、最近は大きいのはもういいよ~、軽量コンパクトなシングルでカッコイイのを私も造ってみたいな~、てな感じでして。これが歳をとった、ということなのでしょうか。(まだ”一応”30台なんですけどね)